日本プライマリ・ケア連合学会学生・研修医部会中四国支部の見解を紹介します。(地域公共交通勉強会編集部)
ナショナルミニマム不在の医療・交通 ーこれからの生活保障に向けてー
日本プライマリ・ケア連合学会学生・研修医部会中四国支部(代表:島根大学医学部医学科4年 福田 学)は、令和5年2月26日(日)、地域医療支援学講座等のご後援をいただき、附属病院において表題のシンポジウムを開催しました。
本シンポジウムは、法で供給義務を規定される郵便、通信、水道等他の生活基盤と異なり、国が保障する最低限の生活水準を意味する「ナショナルミニマム」への国民合意が存在せず、地方自治体によって辛くも支えられているのが現在のへき地医療であるとの課題意識の下に計画されました。この状況はへき地医療に限らず、過疎地交通もまた同様の課題を有しています。本シンポジウムの特色は、両分野の専門家や実践家を同時にお招きすることで、より相対的な視点から今後の展望について考えた点に存します。
当日は会場、オンラインを合わせて約100名の参加があり、単なる赤字解消のための改善効率化を乗り越え、達成すべき政策目標の明確化の必要性、国の財政保障とともに具体の政策立案・執行における地域への権限移譲の重要性等が学術的考究、実践的事例に基づき報告された後、両分野の有識者間で意見交換が行われ、持続可能な地域社会をつくる上で医療・交通をどれだけ守り、どう制度的に担保するのか、ということについて議論を深めました。
※ 詳細な開催報告は、以下の公式ウェブページをご参照ください。
https://shimane-med.notion.site/shimane-med/f50c41270138424da4537d33c929e3cd
配布資料
当日のプログラム
緒言
「ナショナルミニマム不在の医療と交通-異領域にまたがる共通の病理」
島根大学医学部医学科 福田 学
基調講演1
「離島における地域医療の提供とナショナル・ミニマム保障」
島根大学法文学部教授 関 耕平
基調講演2
「揺れるナショナルミニマムー公共交通分野を中心に」
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻
広域システム科学系人文地理学分野博士課程 山本 卓登
事例報告①
「過疎地交通の現状と今後」
株式会社バイタルリード 代表取締役 森山 昌幸
事例報告②
「地域医療を支える島根県の取組と今後」
島根県健康福祉部 医療統括監 谷口 栄作
事例報告③
「救急空白『生命権』保障における法・政策の空白領域として-」
一般社団法人グローカル交流推進機構 理事 田中 厳
事例報告④
「生存権保障の一手段としての公共交通一政策のあり方を実務現場から考える―」
一般財団法人計量計画研究所研究員 何 玏
(芝浦工業大学大学院理工学研究科地域環境ステム専攻博士(後期)課程在籍)