規制緩和後の生活交通確保に対する学説と自治体の姿勢の展開――ミニマム保障と利便性向上の概念的曖昧さと政策目的の希薄化

論説
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2023年11月25日(土)に東京都立大学南大沢キャンパスで開催された第68回土木計画学研究発表会・秋大会で何玏(芝浦工業大学)が行った標記研究発表の資料を紹介します。

規制緩和後,生活交通を確保する役割は自治体が負うこととなった.公共交通を,自治体の生存権保障の一手段と位置付けるならば,自治体には生活に必要な最低限度の公共交通を特定して維持することが求められる.しかし,実際には,収支率や利用者数を指標に一定の利用度のある公共交通を維持するという考え方や,地域住民の努力を公的補助の条件とする考え方を採る自治体が少なくない.本研究は,自治体の政策文書やそれに影響を与えた専門家の文献を分析することを通して,それらの議論がコミュニティバスブームの時代的制約も受けてミニマム保障のための公共交通と追加的な利便性向上のための公共交通とを概念的に区別してこなかった問題があることを指摘するとともに,このことが自治体によるミニマムな公共交通の特定と保障という政策目的を希薄化させている可能性があることを明らかにした.

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