当勉強会メンバーが提供できる講演コンテンツの一例を紹介します。
地域公共交通活性化再生政策の歴史
地域公共交通活性化再生政策は、途中で政策目的が大きく変わっているため、成り立ちの異なる制度が同居することとなり政策趣旨が見通しづらくなっています。これを独力で読み解くことは難しいため、ご一緒にふり返る機会を持ちます。
- そもそも地域公共交通活性化再生政策とはなにか
- 地方バス路線維持費補助制度の成立
- 2002年の需給調整規制の廃止と新しい生活交通確保維持方策の確立
- 特別交付税措置の拡充とコミュニティバスブーム
- 都市バス補助制度の系譜(新バスシステム、オムニバスタウン)
- 2002年の公共交通活性化プログラムの開始
- 2006年の道路運送法改正、地域公共交通会議制度の開始
- 2007年の地域公共交通活性化再生法の成立と地域公共交通活性化・再生事業費補助事業
- 2008年の都市・地域総合交通戦略開始
- 2009年の事業仕分けによる地域公共交通活性化・再生事業費補助事業の廃止判定
- 2011年の「地域公共交通確保維持改善事業 ~生活交通サバイバル戦略~」への予算組み替えによる生活交通確保維持方策と公共交通活性化政策の合流
- 事業評価制度の導入
- 2014年の「地域公共交通網形成計画」開始による地域公共交通のマスタープランの開始
- 2017年の「地域間幹線系統等における生産性向上」開始
- 2020年の地域公共交通活性化再生法改正、国庫補助と地域公共交通計画の連動化
- 連携と協議の含意
地域公共交通活性化再生行政を解読する~混在する政策目的の切り分けを手掛かりに~
「地域公共交通」とは、不採算な公共交通を指す日本の国土交通省の行政用語といえます。不採算な公共交通といっても、都市交通問題緩和のために補助金で底上げしなければならない都市公共交通、郊外のコミュニティバス、過疎地の生活路線バスなど、タイプの異なる公共交通が含まれます。公共交通を維持するための論拠は、独立採算サービスなら採算、都市公共交通なら便益、コミュニティバスなら行政裁量、生活交通なら生存権が挙げられますが、いずれも異なる経済概念であり、計画手法も国の政策対応も別物でなければ本来おかしいはずのものです。地域公共交通活性化再生行政は、これらを区別していないところにその「理解しにくさ」がありますが、混在する政策目的の切り分けを手掛かりに、オーディエンスの皆さんとご一緒に「解読」ひいては「あるべき姿の構想」を試みます。
- はじめに
- 不採算公共交通そもそも論
- 公共交通の本質は2つ
- 切り分けて考える地域公共交通の計画法
- 既往の「地域公共交通」の計画法
- 社会的最適サービス水準図による様々な事象の説明
- どうしてこうなった?学説の展開から。
- インセンティブ設計の考え方
- どうしてこうなった?政策の展開から。
- エピローグ それでも「地域公共交通」
公共交通補助制度入門
日本の公共交通は独立採算原則に基づいていて……という「常識」もありますが、実際には日本にも体系的な公共交通運営費補助制度が半世紀にわたって存在しており、現在の公共交通網とサービス水準は補助制度の影響を受けて形成されています。自治体の公共交通についてコンサルタントが検討を行う場合は、背後にある補助制度がどのように作用しているのかを見なければなりません。私たちが現地で地方鉄道や路線バスを見たときに、その「補助金の出どころ」が一目でつかめるような知識を学びます。
- イントロダクション~日本における体系的な公共交通運営費補助政策の存在を知る~
- 現行制度の説明
- 維持確保責任の政府間配分
- 広域的・幹線的な生活路線への国・県協調補助
- 県単独補助
- 市町村単独補助
- 地方バス向け特別交付税措置
- 地域内フィーダー系統国庫補助特論
- 路線のライフサイクルと補助制度
- 参入退出のライフサイクルと適用補助制度の関係性
- 地バス補助2種生活路線、3種生活路線、廃止代替バス
- 新設補助路線
- 路線廃止と代替方策検討のプロセス
- 退出規制のあり方紹介と事前申し出の重要性
- 退出申請に対する代替方策検討プロセス
- 日本の公共交通補助制度の成り立ち
- 地バス補助
- 規制緩和に伴う補助制度の分権化
- 国から地方への政府間補助の方法論
- 一般補助金
- 包括補助金
- 特定補助金
- 補助金の交付方法論
- 欠損補助
- 総費用契約
- 純費用契約
- いくつかの補助要綱の解読例
- 一見無味乾燥な補助要綱を読んで、当該自治体・政府がどのような生活の足を守ろうとしているのかを読み取ろう
- まとめ
- 補助制度により、下位の政府や事業者の判断が影響を受け、生み出されるネットワークが違ってくる。サービスの外形だけでなく補助制度に着目することの重要性。
自治体は国のいかなる財源制度を背景に行動しているか~徹底解読地方バス補助制度~
建設コンサルタントの業界でも、地域公共交通(補助金付き公共交通)に関する業務に従事する機会が増えています。
地域公共交通の領域では、自治体は、国の講じている補助制度や財政措置を背景として行動を決定しています。
しかし、土木計画学の地域公共交通サービス設計論では、サービスの外形や住民ニーズを出発点にものを考えることが推奨されることが多いのが現状で、「財源制度」に対する視座はまだ乏しいままです。
実際には、自治体は国の財源制度を強く意識して公共交通サービスを生み出しており、我々コンサルタントが自治体とよりいっそう「噛み合った話をする」ためには、国の財源制度について、自治体職員並みの理解を獲得することが非常に重要です。
地域間幹線系統国庫補助、地域内フィーダー系統国庫補助、特別交付税措置等について学びます。
- 地方バス補助創設の背景
- 2000年頃の議論と審議会答申
- 現行の補助制度
- 市町村の財源認識と活用実態
- まとめ
生活支援交通の計画手法、公共交通維持基準入門
土木計画学の学者・実務家は都市交通調査や道路交通を専門にしてきましたが、国や地方自治体ではローカルな公共交通の維持確保もますます重要な問題となっています。生活支援のための公共交通、「生活の足」の確保のためには、都市交通とは異なる専門性が要求されることは事実です。一方で、その政策手法の根幹はこれまで取り組んできた交通計画と共通する部分もあり、一定の知識を蓄えたうえで我々が技術力を発揮することは可能ですし、生活支援交通の計画手法を知ることは都市交通の調査・計画にも良い示唆があるはずです。生活の足確保の計画手法の基本と最先端を紹介します。
- 手段としての公共交通
- 事例紹介~島根県浜田市弥栄のやうね号と国保弥栄診療所
- 生活支援交通の政策目標(入門)
- ニーズ充足論の問題と活動機会
- さまざまな計画法
- モビリティとアクセシビリティ
- 生活支援交通の計画手続き(理論)
- 公正概念の整理
- 帰結的公正概念としての効用アプローチと基本財アプローチ
- 手続的公正
- 内部補助とユニバーサルサービス
- 帰結的公正としての内部補助
- ユニバーサルサービス確保のための政策選択肢
- ネットワーク産業とユニバーサルサービス
- ミニマム保障論
- 補完性原理
- ミニマムサービスの特定手続としての協議の場
- 公正概念の整理
- 公共交通維持基準入門
- 生活に不可欠なサービスの確保か、一定のボリュームの需要があるサービスの確保か
- 地域の努力を前提とした路線維持論の位置づけの検討
- ミニマム保障と頑張る地域応援の切り分け
- 定額支出と定率支出がミニマム保障に与える異なる影響
あるべき地域公共交通計画の策定手法
地域公共交通計画といえば国交省の手引き書に沿って作るものという感じがしますが、本来、自治体の交通計画というものは自治体独自の創意工夫を凝らして策定するものです。本講演では、俯瞰的な観点から、真に自治体にとって必要な(義務化されたからというのではない)地域公共交通計画の策定手法を提案します。
- 「交通手段の姿」ではなく「まちとくらしの姿」を目標に掲げる必要性
- 地域公共交通政策は交通空白解消だけか
- 公共交通の本質は2つ
- 余談 なぜ国の政策は最大公約数的な「公共交通の活性化」なのか
- 主観指標から客観指標への転換の必要性
- 主権者としての住民の判断を取り入れる交通計画
- 具体的な計画の構成案
デマンド交通は本当に効率的か?
昨今、国の補助制度の影響もあり、デマンド交通への期待感が強まっています。プロドライバーを使わないデマンド交通という意味での公共ライドシェアも同じです。運転手不足の時代には、1人の運転手を1日何人の乗客でシェアするかという観点が重要ですが、その点、デマンド交通は、定時定路線バスほどには効率的ではない交通手段です。タクシー利用補助に負けることも多いです。デマンド交通との冷静な向き合い方を学びます。
- デマンド交通は効率的か?
- タクシーとの比較の観点
- すでにそこにあるタクシー補助
- デマンド型交通のあるべき導入手順
- デマンド交通とはなにか
- フルデマンドだけがデマンドではない
- 事例探訪
- 大都市フルデマンドの未来を考える
- 配車技術
- オンデマンド交通の適地について
- 配車システム会社の分類について
- 各社紹介
- 発達史